本書は、アメリカ議会の委任によって施行された医学研究所(IOM)が、シリコン豊胸バッグに関する研究・調査を行い安全性が証明されたレポートを、日本語に翻訳した文献になります。 ※アメリカ医学研究所(IOM) アメリカ科学アカデミーに与えられた議会の許可のもと、医療の懸案事項を系統的に分析し、医療安全対策における政府の役割を明確に規定して提言する非営利機関。日本における日本医学会がこれに近い。
アメリカでは少なくとも150万人以上の女性がバストにシリコーンインプラントをいれています。このうち、3分の2以上の女性はバストのサイズや形を変えて、外見をより良くしたいという希望でいわゆる「豊胸手術」を受けた方に相当します。この数字は、それほど驚くべきものではありません。なぜなら1998年の調査でアメリカ女性の34%が、自分のバストに満足していないというデータがあるからです。ブレストインプラントの手術を受けた残りの女性たちは、乳癌で乳腺組織の除去手術を受けたあとの再建目的が主な理由となっています。 現在、乳房インプラントは軟らかい袋状の物で、中身には食塩水が満たされています。インプラントの袋は人体によくなじむ(親和性のある)ゴム様の物質シリコーンから出来ています。1990年までほとんどのブレストインプラントの中身には、合成シリコーンジェルが使用されており、その仕上りは現在の食塩水のインプラントより優れたものでした。しかし、このシリコーンジェルに対して、豊胸手術を受けた女性の中で何か身体に悪い影響があるのではないかという恐れから議論が巻き起こりました。 その当時、豊胸手術を受けたほとんどの女性は、術後多少の問題を生じた人達も含めて結果に満足していました。(精神的満足が問題を上回っていたのです。)しかし、少数の女性は再手術やインプラントの除去を必要とするような望ましくない結果を生じてしまいました。 その原因としては、 ● インプラントが破損し、周辺の組織にシリコーンジェルが漏出してしまった。 ● カプセル拘縮 ● インプラントから食塩水が抜けていってしまった ● 重症のカプセル拘縮や術後の筋肉のスパスムなどによる痛み などが上げられます。 更にシリコーンジェルの入ったインプラントは、自己免疫病、癌、若しくはシリコーンに関連した新しい病気を引き起こす可能性があるに違いないと主張する女性も出てきました。このことを信用する結果として、インプラント製造業者に対して盲目的にシリコーンブレストインプラントによって害を受けたと主張する女性たちから訴訟を起こされたのです。
IOMのレポートは、シリコーンブレストインプラントに関する様々な角度からの調査結果は440頁にものぼります。この調査の最終的な目的は、シリコーンのブレストインプラントに関する判明したあらゆる情報を女性に提供することにあります。次に述べることはこのレポートのハイライトになり、豊胸手術を考えている女性だけでなく、既に手術を受けた女性にとって有用な情報になるでしょう。
IOMはシリコーンブレストインプラントの安全性に関する、以下に上げる女性の最大の関心事に焦点を絞り調査しました。 ● 重大な病気の原因になる可能性 ● 授乳に与える影響 ● 胎児に与える影響 ● 放射線に対する影響 ● 癌検診に与える影響 ● 最新のインプラントや手技によってもたらされる効果 ● 免疫システムに及ぼす影響
シリコーンブレストインプラントが乳癌の発生や、乳癌再発の原因にはならないことが明らかになりました。実際いくつかの研究では、インプラントを入れている女性が、入れていない女性より癌の再発が低いということも示唆されました。 例えば、豊胸手術を受けた3,182人の14年間に亘る追跡調査では、同じ数の豊胸手術を受けていない女性に対して予想される癌の発生数43人に対して、31人と有意に発癌性が少なかったのです。しかし、これがどういう理由によるのもなのかは明らかになっていません。更にシリコーンインプラントの自己免疫病との因果関係を示す証拠もありませんでした。更に数人の研究者が主張しているシリコーンインプラントによる新たな疾患の存在を示す証拠もありませんでした。多発性硬化症や多発神経炎、メニエール氏病といった神経性疾患の症候とブレストインプラントが関係あるという研究情報が出たことがありますが、これに対してもきっぱり否定されました。 要するに今まで疑いをかけられたシリコーンインプラントと様々な疾患との因果関係は全て否定されたことになります。
シリコーンインプラントの重大な関心事の1つに、授乳に対する安全性があります。インプラントを入れている女性の母乳に含まれるシリコンよりはるかに多くの量のシリコンが牛乳や乳児用の製品の中に含まれているという事実は重要なことです。実際シリコーンインプラントを入れている女性と入れていない女性の間に、母乳中ならびに血中シリコンレベルの差異はありませんし、シリコンインプラントを入れている女性の母乳中のシリコンレベルが上昇するという証拠もありませんし、何か有害な物質が出てくるということもありません。 シリコーンインプラントを入れている女性の中には、多少授乳に困難を覚える人もいますが、IOMは全てのシリコーンインプラントを入れている女性に、ぜひ乳児に母乳を与える様にしてほしいと思います。なぜならそれは、乳児にとって本来とても有益なことなのですから。
シリコーンは、胎盤を通過して胎児の発育に何か悪影響があるのではないかという疑いがありましたが、IOMはインプラントを入れている女性と胎児の発育差異に因果関係を一切見つけることはありませんでした。
すでに公表されているレポートに反してIOMは、放射線治療の邪魔をすることはないと結論に達しました。しかし豊胸手術を受けられた女性が、乳癌にかかり放射線治療を受けた場合カプセル拘縮を引き起こしたという報告はあります。
シリコーンインプラントが1963年に最初に開発されてから、数多くの改良がなされてきました。時代の変遷は比較的短いとはいえ、現代のインプラントは破損や痛みを呈するカプセル拘縮の発生に対して十分な予防効果があるものになっています。 現在インプラントの大半は大胸筋の上ではなく下に入れられるようになってきました。インプラントを大胸筋の下に入れることはカプセル拘縮の発生率を引き下げることに貢献し、乳癌検診の画像が見やすいというメリットがあります。インプラントの外皮は凸凹構造を成しており、このことがまた、拘縮予防に絶大な効果を発揮します。外皮そのものも強靭なものになっており、浸出を防ぐ為にバリアー層が施されております。 食塩水のインプラントは最初に紹介された時それ程人気がありませんでした。それらはしばしば凋んでしまい、シリコーンジェルのインプラントに比べ結果も良くありませんでした。しかし、最近の食塩水のインプラントは全ての面で改良されてきております。
身体の中に入った外来の蛋白質を抗原と呼びます。そして多くの抗原がバクテリアやウィルスの中に見い出されます。身体は抗原の存在に反応し抗体を作ります。白血球の1つのタイプであるT cellは病気から身体を守る為に重要な役割を果たしています。これらの防御機能が誤った方向に作動してしまうことにより自己免疫異常が生じます。例えば、リウマチ性関節炎などがこれに相当し、自分自身の組織を攻撃してしまうのです。 こういった異常はある程度の毒素によりもたされる事がありますが、シリコンインプラントがこういった異常反応を起こす原因になるという証拠などはどこにもありません。シリコーンインプラントに対する女性の関心に答えるために、イギリスで組織された独立機関グループは、ブレストインプラントの中身にシリコーンを使用する事は毒性の心配がほとんどなく、免疫機能に悪影響のない事がわかったと結論付けています。
IOMはシリコーンインプラントに関する歴史、毒性、化学についての様々なドキュメントを研究、評価してきました。先進国においては、シリコーンは食料品、化粧品、潤滑剤、その他多くの消費材に使用されてきており、そこで生活する人々は少なからずのシリコーンにさらされて来ていることがわかりました。 全ての研究報告の中で、乳腺組織やその他の臓器にはシリコーンの存在を示す、シリコンが存在していることを認めています。生理食塩水インプラントやシリコーンジェルインプラントの周囲には、やや基準値を上回ったシリコンが存在します。もちろんインプラントが破損した場合には、より多くのシリコンが存在します。しかしながら、このシリコーンは身体の他の組織に移動することはありません。 IOMはブレストインプラントからのシリコーンの暴露は、インプラント及びそのカプセル周囲のリンパ節に限られていることがわかったと述べております。そして、その他の組織に見出されるシリコンは、生活環境の中からのシリコンの暴露を反映していると結論付けています。そしてこの調査のまとめとして、ブレストインプラントの中のシリコンは期待されていた通り、身体に悪影響を与える基準量を超えるものではないとしています。
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